双六がすごろくと読むことを思い出す
2020.06.26 | ちょいとディープ天気が別に良かったわけでもない日曜、ふらっと夕方、散歩に出ました。
友人に勧められた知事公館のお庭へ。
近いのに訪れたことがなかった知事公館の庭は古くて大きな木がたくさんあって、小川も流れ、元気な日は最高に気持ち良さそうだし、調子が悪い日には鬱蒼としてちょっと怖そうでした。
調子が悪くもない日で良かったです。
しかし涼しいを越してやや寒さを感じてきました。
あてのない散歩を終了し、お店探しの旅に切り替えます。
今すぐあったまりたいから。
日曜日の17時。
お茶の時間はもう過ぎました。(コーヒー飲んだら夜眠れなくなる時間ともいう)
お酒の時間です。
西11丁目〜西18丁目あたりの日曜は定休日のお店が多かった。
どうしようかな、このあたりになんかお店なかったけな。
でかい看板の大通漢方薬局を曲がり、仲通に入った途端、めちゃくちゃいい匂いがしてきました。
頼むから誰かの家の晩ご飯とかやめてくれ。
すき焼きみたいな、肉を煮込んだ感じの匂いがする。
今まさに求めているあったかいものじゃないかい。
仲通を匂いに誘われて歩いて行くと、3軒ほどのお店が並んでいました。
やっているのは真ん中のお店のみ。
ドアが開いていて、ちょっと覗くと「お酒と肉どうふのお店です」と書いてあります。
絶対ここじゃん!
肉どうふだったか!
一人飲みブランクで瞬発力がなく、一回通りすぎる。
他に店もなさそうだし、もう体が肉どうふ食べたいって言ってるし、うーーーん。
心の中で右往左往している間に、中のお客さんと目が合って「いらっしゃい」と言われたため、あっさりと入店。
これも鶴の一声というやつでしょうか。
今日は「双六」にお邪魔します。
入ってみると、1人と2人の2組がいて、その真ん中にあった席に私が座り、カウンターは4人でいっぱいになりました。
奥に、大きめの一人用サイズのソファみたいな椅子が3個、横1列に並んでました。
店主いわく2名・2名の2組座れる席とのこと。
奇数を偶数で割る。頭の柔らかさを感じます。
なんだかすごいところに来てしまった気がするけど、ひとまず軽めにレモンハイから始めることに。
メニューは基本的に壁に貼ってある手書きのもので、特に書いていませんが水割りか炭酸割りか、大か小か選べました。
あれですね、どう飲むかとか、そこで最初に少し会話が生まれるので良いですね。
気さくな店主と1人飲みの常連と思しきおじさんが気を回してくれます。
店主は広島出身で、置いている日本酒は広島の酒造のみ、食材も広島のものだったりするのだそう。
久し振りに知らぬ店に一人で来たので、まだふわふわと目が泳ぐ。
お通し的なつまみを頼む余裕なく、早速、本命の肉どうふを注文する。
私の目の前には大きなガスの炊飯器があって、木蓋がしてあったのですが、それが開かれて、茶色いタレの海が現れました。
そこに肉をぽいぽい入れる店主。
タレの中でしゃぶしゃぶされる肉と、その波で揺れる豆腐。
豆腐ははじめからタレの海の中をぷかぷか漂っていて、待ちの状態でした。
なるほどねーーーー!!
大きなタレの海がこの店の肝だね!!
火が通りタレもまとった肉と、スタンバッてたシミシミの豆腐、切りたてのネギが一皿に集まって私のもとにやってきました。
いや〜美味しい。
作ってる工程からもう美味しかったし。
タレの味がご家庭の醤油+砂糖みたいな味とちょっと違います。
広島流だと調味料なんかもちょっと違うのでしょうか。
それもまた良いです。
まだ存在はふわふわしてますが、心の中では「これだこれだー!」と拍手喝采しています。
肉どうふを楽しんでる間に、隣の1人飲みおじさんが煮卵を頼みました。
再び木蓋が開かれます。
ほわっと広がるタレの香り。
作って冷やしてあったのであろう煮卵をぽっちゃん。
しばらくタレに浸からせて、すくい上げる。
「温め」という仕事も担う、タレの海。
レンチンいらず。
ブラボー!!
私の煮卵じゃないのに食い入るように目で追いかける。
最後に、壁にくくりつけてある細い糸で煮卵をカットしました。
必殺仕事人のごとく。
きょとんとする私の視線に気づいた店主が、「釣り糸で切ってるんですよ」と。
ブラボーーーーー!
変なスイッチが入ってしまったのか、純粋にその工程にエンタメ性があるのか、もうたまらなく楽しいです。
至って平然としていますが、めちゃくちゃ楽しいです。
しばらく飲みに行かない間に私はどうかなってしまったのか。
1人飲みのおじさんは帰ってしまったけど、逆隣の2人組はずっと芸能人とか映画について業界人ぽい視点で語り合っています。
語り合うというよりも、昔の芸能ネタを語り続ける先輩とそれに対して程よいコメントを返す後輩です。
いい話題です。BGMに懐メロを聴いてる気分です。
さて、肉どうふもレモンハイも終わってしまう。
さくっと帰るかもとメインを先に頼みましたが、心の熱が冷めないのでもう1杯飲もう。
広島の日本酒の店ですって言われましたので、広島の日本酒を。
桜酔
花酔酒造という名前の酒蔵の、花見に飲んで欲しい酒だそう。
桜は終わってしまったけど。
すっきりと飲みやすいお酒です。
受け皿ないのになみなみ注いでくれる。
アテはどうしよう。
日本酒に合うだろうなという味だったので、肉どうふをおかわりしてしまいたい気持ち。
心の中では「アンコール!アンコール!」と手拍子を打つ私がいます。
でもちょっと恥ずかしいです。
気を取り直して、いったんじゃこおろしをお願いします。
広島のじゃこを仕入れているそうなので。テロワール。
じゃこの量がすごいです。
普通は大根7:じゃこ3くらいじゃないんですか。
双六はその逆です。
どこまでもじゃこ。
ちょっと休憩的な感覚で頼んだのに、噛んで噛んで、そこそこおなかがいっぱいになるという嬉しい悲鳴。
もう肉どうふをおかわりできないよ。
よし、煮卵だ!
煮卵というエンターテイメントをアンコール。(1個目は私のものではないが)
黄身が半熟でとろとろ、タレの染みた煮卵は食べても最高でした。
新しくやってきた1人飲みの常連さんから近所のオススメ店の情報をもらったり、心地よく酔いが回ってしまっています。
調子に乗って久しぶりの日本酒を飲んだため、もうまっすぐ帰るしかない酔い具合です。
こんなに楽しいのに1軒で終わるなんて・・・
ゆうとくんが羨ましい。(ゆうとくんは4軒はしご)
とはいえ、じわじわと楽しさが湧き上がってくる、良いお店を見つけたので満足してしまいました。
告知的なことは一切しておらず、口コミだけで気づけば3年だそう。
3人以上で行くと断られる可能性のある小さなお店です。
近所の常連さんに愛されている、素敵なコミュニティでした。
あの炊飯器に会いたいに私もまた行きたい。